JR東日本の電子マネーSuica(スイカ)
JR東日本のIC乗車券Suica(スイカ)は、駅の改札の光景を一変させた。朝
夕のラッシュのときなど、通勤・通学客はスイカをパスケースに入れたまま改札をタ
ッチして、スムしスに通っていく。河の流れのように利用者が整然と移動していく。
しかも、みながスイカを使うことをどこか嬉しがっているように思える。こんな様子
は、以前にはみられなかったものだ。
そのスイカは、乗車券・定期券だけでなく、駅店内で電子マネーとしても使えるよ
うになった。クレジットカードとも合体した。さらには、携帯電話のなかに入って飛
行機の搭乗にもシームレスに利用できる予定があるなど、日を追って機能を増やし使
いやすくなっている。
こうしたメリットが理解されたためか、スイカは2001年11月の発行以来、わず
か3年足らずで1000万枚を記録するという快挙をなしとげた。1000万枚とい
うと、クレジットカードでもなかなか到達できない数字である。日本一といわれるJ
CBグループのカード発行枚数が40年かかってやっと約5000万枚である。第二位
の三井住友カードも30数年で、1300万枚(単体)だから、クレジットカードと電
子マネーという違いを差し引いてもスイカのすごさがよくわかる。
これまで、ICカードや電子マネーというと、掛け声ばかりで、実用化で成功した
例はほとんどなかった。私がみたなかでは、伊勢丹が自社のカード会員の。子どもたち
(o~12歳)に向けて発行しているICホルダー(来店のたびに身長を記録)が「可能性
あり」と思えたくらいのものである。それ以外のケースは、住基ICカードやICテ
レホンカードなど発行者側のひとりよがりというものが多くて斬新といえるカードは
少なかったし、一般の支持を得るまでには至らなかった。
ところが、このスイカだけは、発行当初から、利用者に受け入れられて人気になっ
た。そのヒットは、JR東日本の関係者たちも驚くほどであった。
スイカ成功の理由はいくつかあるが、そのひとつは、「かざす」という行為だけで、
改札の扉を開いて駅横内に入ることができるという手軽さにあった。これまでのIC
カードは、端末機に差し込んで、暗証番号を入れて利用するという、少々煩雑な手続
きを要求された。スイカはソニーの開発した非接触型ICカード「フェリカ」を基盤
に使っているため、O・2秒という速さで改札を通過できる。その速さと手軽さが、
いかにも21世紀の新しいカードというイメージを与えて、多くの通勤・通学客の心を
とらえた。
しかし、それ以上に重要なのは、スイカを開発し運営するJR東日本のスタッフた
ちの「真摯さ」にあったといえるだろう。電車を時間通りに、しかも安全に走らせる
ことを第一とする人たちであるから、スイカに関してもその通りの心構えで臨んだ。
そのため、スイカの実験と実用化についても何度も試行錯誤を繰り返し、失敗しない
ことが裏づけられなければ絶対に動き出さない、「石橋を叩いても渡らない」慎重さ
でスイカを発行し、運営している。その安心感、信頼感が利用者に理解され、成功を
もたらしたといえる。
そして、スイカはいま、JR東日本という一部上場企業の業態をも変えようとして
いる。がっては運輸業中心であった同社は、いまや物販、カード事業などを加えて、
総合生活サービス業者に生まれ変わろうとしている。その業態変革を促しているのが、
乗車券、電子マネー、携帯電話と、まるで、蝶の「変態」のように進化するスイカな
のである。スイカの発展が企業の変革と活性化にうまく結びつき、同社は、いま第二
の創業期を迎えつつある。先日発表された中期経営計画「ニューフロンティア2008」でも電子マネー事業を経営の中核に据えるとはっきり記されている。
一枚のICカードが企業の経営戦略に深く関わり、その経営方針を決定するまでに
なっている。その意味でも、スイカの誕生とその挑戦は、21世紀の企業経営を考える
うえでは貴重なヒントを与えてくれるだろう。
1995年4月3~から半年間にわたって第二次フィールド実験が実施された。この回では、社員モニターの数と対象となる駅が増加された。対象駅は、東京駅など首都圏のB駅の14改札口であった。モニターは同社の社員とメーカーの関係者約900名で、やはりICカード定期券を迦勤に使って試した。
今回は、前回の結果を踏まえて、カードの読み取りをより正確にするためにカードをかざす位置がはっきりわかるデザインを採用した。自動改札機のトップカバーに複数の緑のランプをつけ、点滅させることでICカードのかざし場所への誘導を強調した。 続きを読む
1994年2月14日から3月15日まで第一次フィールド実験が開始された。東京、品川、人船など8つの駅で実験用の自動改札機が設置され、400人の社員モニターが動員されて朝夕の通勤時間帯に実験に参加した。
実験では、モニターが手にした定期券(非接触型ICカード)を改札口にかざして通過し、カードの耐久性、システムの信頼性、操作性などが検討された。ICカードの大きさは、クレジットカード大で、厚さO.8ミリ、重さは6グラムで、このなかに電池とアンテナ、ICを内蔵するタイプであった。また、読取機の識別電波には準マイクロ波が使われた。 続きを読む